植物に癒しのパワーがあるのは、もう、ご存じですね。木漏れ陽が差し込む森林のなかを散策すると、なんとなくストレスが解消されたような気になってくるから不思議です。樹木が発散する「フィトンチッド」というリラックス成分のおかげで、イラっと(笑)していた気持ちがクールダウンするのだとか。咲き誇るお花を見ても、心がやすらぎますね。四季折々の花たちもマイナス感情を癒してくれるということで、花療法というのも登場しました。そして、いま、植物の癒しパワーのなかで注目され、世界的ブームになっているのが盆栽です。
盆栽というとシルバーエイジの渋い趣味と思いきや、違うのです。いまやサラリーマンや若い女性たちが盆栽づくりにハマっているらしいのです。
ということで、NHK教育テレビで人気の山田香織先生に、お話をうかがってきました。
先生は盆栽園五代目のお生まれで、盆栽界の若き旗手。若い女性が惹かれる盆栽の魅力を一番よく分かっていらっしゃいます。 −いま、たくさんの若い女性が盆栽に興味を持っているということですが。 山田先生「 盆栽は、大自然の風景を1本の木で表現する“想像”の遊びです。これまでの盆栽というのは、その“1本”という数を厳密に守ってきましたが、私は敢えてそれを破っています。風景づくりをより“具体化”するために、1本の木にこだわらず、“枝もの”と“草もの”の寄せ植えという形態にしました。やわらかで華やかな作風を重視しています」
−なるほど、盆栽というよりはBONSAIのイメージですね。そこが若い女性に受けている理由ですね。女性はガーデニングが好きですから、表現が適切じゃないかもしれませんが、観葉植物の寄せ植えの延長のようで、とても入りやすい気がします。ところで、鉢植えと盆栽の違いはどこにあるのでしょうか?
山田先生「鉢植えでは植物の造形そのものや、花や実を楽しみます。対して盆栽は、鉢と植物が美術的に調和していること、鉢の中に自然の景色が表現されていること…等、いろいろな要素が加わって来ます。けれど、あまり理詰めで考えると難しくなってしまいますから、最初は“鉢のなかに自然が表現されている”点だけに注目していただいていいと思います」
−“鉢のなかの自然”が重要なポイントなんですね。 山田先生「器の中に山野草や苗樹木、苔などを植え込んでいきますが、そこに景色を表現しようとすると、心のなかで森林のなかや山奥に分け入っていくシーンを思い浮かべたりして、自分のつくりたい自然をイメージしますよね。いわゆる“目に見えないものを見立てる”ということで、これは禅に結びつく知的遊びといわれています。人々に癒しの力を与えるのは、ここにあるのではないかと思っています」
−禅の精神ですか。そういえばアスリートも採用していますが、イメージトレーニングというのがあって、イメージするだけで実際に行っているのと同じ効果が顕われるらしいんです。自分の造りたい・表現したい自然をイメージすると、実際、森林のなかに入らなくても、自然のなかにいるのと似たような癒しの効果が得られるのかもしれませんね。
山田先生「それに、毎日のお世話もありますし。人間、手間をかけたものには愛着がわいてくるものです。乾いた盆栽に水を与えると、盆栽がよろこんで水を吸ってくれるのが分ります。つかの間の植物とのコミュニケーションです。盆栽にお水をやりながら、実はこちらが癒しのパワーをいただいているのがよく分ります。手間をかければかけるほど、成長の度合いも違ってきて、こちらの努力にきちんと応えてくれるんですよ。このように、盆栽は私たちに癒しという大きなパワーを与えてくれる“生きた小宇宙”です。これからも“遊び心”を忘れないで、盆栽の魅力を若い女性たちに発信し続けていこうと思っています」 (取材&文責・小松瑠美) ■Profile■ 山田香織<盆栽家>
4代目清香園主山田登美男のもとに一人娘として生まれる。幼い頃より跡取りとしての盆栽の教育を受ける。NHK教育テレビ「おしゃれ工房」「趣味の園芸」「趣味悠々」に出演。フジテレビドラマ「小早川伸木の恋」では盆栽指導を担当。著書多数。
「女性や初心者の方にも、もっと盆栽の楽しさをお伝えしたい」と「彩花盆栽教室」を設立 。主宰を務める。 NHK文化センター・さいたまアリーナ教室講師。
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http://www.seikouen.cc/index.html
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