美恵子さんの描く絵には不思議な癒しの力を感じます。本人は謙遜してけして上手ではないと言いますが、柔らかい色使いや、素朴な飾らない絵になんともいえない安堵感があります。たくさん描き溜めた絵の中から、ベインさんが「これは“気”が入っていていい」と感じる絵を得意のPCを使ってポストカードにしてくれます。季節のごあいさつやクリスマスには友人たちに手作りカードが送られます。見せていただいたカードの中にはとても元気が出て、希望がわいてくるものがありました。テーマは「Hope」。大きな黄色い花が主役なのに、なぜか大草原を感じる絵で、風までも香ってくる気がするのです。他にも水を感じる絵や火を感じる絵など、美恵子さんの絵の中には優しい自然が含まれているようで、とても癒されるのです。
ところで二人の出会いが気になってお尋ねしてみました。22年前の成田空港。その日は連休前でとても混雑していた日でした。美恵子さんはさっきまで出国審査の列で他愛のない会話を交わした男性のことが気になっていました。スイス行き搭乗口でボーディングパスをまさに手渡す寸前、あの男性にもう一度会うために大急ぎで逆走しました。あっけに取られる山登りの仲間たちと元ご主人。説明する暇などありませんでした。「NY便のゲイトはどこ? 彼に私の連絡先を渡しておかなくっちゃ!」。もう間に合わないはずが、その日に限ってゲイトを間違えたベインさん。二人は見事に鉢合わせしたのです。その時、美恵子さんは確信しました。「この人だわ!」。その旅行では、もうひとつの不思議な感覚を覚えます。談笑する仲間たちの中に元ご主人と偶然隣り合わせの女友達。「この二人は本当は結婚する運命だ」とふと感じたのです。美恵子さんがベインさんを選んで渡米したいと打ち明けた時、元ご主人が苦悩を相談する相手にえらんだのは彼女でした。そのうちに結婚も現実となったのです。「最初は自分を責めてみたけれど、彼はベインに会うまでの道先案内人だったんだと今ではすべての出会いと別れに感謝しているの」。ベインさんもまた、美恵子さんと出会う前に台湾の古寺で老僧に声をかけられ、不思議な予言をされました。「あなたは東洋の女性と結婚して幸せになるよ。あなたのお母さんの生まれ変わりだ。大切になさい」。
ベインさんは20代のころにお母様を亡くされていて、この言葉がとても印象的だったといいます。これほどの出会いが世の中にあるとは、驚きました。誰しもが運命の人に出会いたくて、また出会っても迷うものなのに……。しかし、運命によって結ばれた二人の人生はいつも順調だったわけではありませんでした。山あり谷あり、お金は底ついて、小さなアパート暮らしがやっとだった時代もあったそうです。一体どうやって乗り越えてきたのでしょうか?運命的な伴侶に出会えることも大切なことだけど、今は誰しもが憧れる暮らしぶりにも興味津々です。「信じていたのよ。二人でリッチになるって。そして大切なのはハッピーであること。リッチでも幸せじゃないと意味がないでしょう?そしてベインちゃんをいつも、うんと褒めてあげたの。それだけ」。美恵子さんに褒められたくていくつもの難関をクリアしてきたり、地位のある仕事も得てきたベインさん……。やっぱり、美恵子さんは本当にベインさんのお母さんだったのかもしれないですね。少年のようなベインさんの満面の笑みと美恵子さんの大地のような優しさにとても癒された旅でした。
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